イタリア代表が好調だ。
ユーロ2020のグループステージでイタリアは3戦3勝。全体の一番先に試合が進行するグループAということもあって、真っ先に決勝トーナメントの切符を手にした。
7ゴール無失点の成績はユーロでのイタリア代表最高記録であるほか、代表戦はここ30試合連続無敗。1930年代のヴィットリオ・ポッツォ監督時代の記録に並んだ。
そんなイタリア代表でひときわ目をひくのが、試合前の国歌斉唱だ。恥ずかし気に小さく歌詞を口ずさむ国が多いなかで、全員が腹の底から声を出し歌っている。いや、叫んでいる。2019年のヨーロッパU-21選手権では、一緒にいたエスコートキッズが、あまりのうるささに耳をふさぐシーンがあったぐらいだ。
「音が外れている」「伴奏とずれている」と、イタリアではいろいろ揶揄されてはいるものの、今やアッズーリ(イタリア代表の愛称)のトレードマークとも言える。
ちなみにその歌詞だが、イタリアが統一戦争の頃(19世紀半ば)の作とあって、なかなか過激ではある。いちばん盛り上がる最後の部分は「イタリアが望めば我々には死ぬ用意がある! イタリアが呼んでいる!」に、皆で「SI(そうだ!)」と叫んで終わる。
今でこそお馴染みのこの全力国歌斉唱であるが、実はその歴史はそれほど古くはない。
かつてのイタリア代表は他国同様、ほとんど国歌を大きな声で歌うことはなかった。イタリアが優勝した82年スペインW杯ではディノ・ゾフもパオロ・ロッシも一言も声を発していないし、90年自国開催のイタリアW杯でも、フランコ・バレージ、ロベルト・バッジョも無言。唯一歌っていたのはGKのワルター・ゼンガくらいだった。
一方、ラグビーのイタリア代表では、昔から大声で歌うのが伝統だった。そこで00年のシドニー五輪の際、当時のカルロ・アツェリオ・チャンピ大統領が、サッカーでもそうしないかと選手たちに勧めた。しかし結局それはうまくいかず、大統領は無理強いするのをやめたが、こんな言葉を残した。
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